KIMUTATSU BLOG
木村達哉のブログ「キムタツブログ」

kimutatsu

I have been greatly inspired.

Posted on: 2011年5月25日(水) 22:38

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日はプロ論を書いたが、今日はそれに関係してちょっといい話を。先日のこと
やけど、夜中に大阪からタクシーに乗った。深夜2時ぐらいかなぁ。

丸ビルの前に停まっていたタクシーに乗って行き先を告げる。僕のほうは結構
いい気分だったので、運転手さんに「景気どうですか」なんて話しかけた。

喋っているうちに気付いたことが1つ。運転手証の写真と運転手さんの後姿が
何気に違うような気がしてね。実物は銀髪なんよ。写真は白黒やからわからん
けれども、それほどのお年でもなさそうな。

「運転手さん、失礼ながらおいくつなんですか」と僕。

「78歳です」と運転手さん。

「78歳? わー、深夜の運転ってかなり体がしんどくないですか?」
「昼間に寝てますしね。しんどくない仕事なんてないですし」
「まぁそうですけど」
「私、もともとトラックをやってたんです」

トラックをやるっていうのは「トラックの運転手をやっていた」という意味です。

「トラックはしんどいらしいですね」
「しんどいです。いいカネにはなるんですが、あれはきつかったですねぇ」
「トラックからタクシーの運転手さんってのはよくあるパターンでしょう?」
「そうなんですが、私の場合はトラックの次にバスに乗りました」

バスに乗るってのはもちろん「バスの運転手になる」という意味です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 
「バスの運転ってトラックと比べてどうなんですか?」
「バスは楽です。バスはクッションがきいていて、東京往復もしんどくないです」
「1日に東京を往復するんですか???」
「はい、ベンツより楽ですよ。大きいから運転し辛いと思うかもしれないけど」
「で、そこからタクシーに変わられたんですね。しかしそのお年でタクシーって、
 けっこうきつくないですか?」
「年齢は関係ないですねぇ。働けるのは幸せなことです」
「確かに。引退しようとか思われないものですか?」
「思った時期もあるんですが、実は私、タクシーに関してはまだ駆け出しでして」

実は景気が悪くなって、会社勤めされていた人がリストラに遭い、タクシー会社
に移ったというケースはかなり多い。だから道を知らない運転手さんも多い。

「あぁ、なるほどそうやったんですね。景気悪いですしねぇ。」
「バスはたいがい高速でしょう? タクシーは下の道なんで道が覚えられんで、
 お客さんに聞いてばかりです。それではプロやないですよねぇ」
「大阪の道もややこしいですからねぇ。」
「辞めようかなと思ったこともあるんですけど、やっぱりなんでも極めてからでな
 いと悔しいじゃないですか。だからもうちょっと頑張ろ思いましてな」
「なるほど。プロの運転手ですね。あと何年で極められますか?」
「そうですねぇ。ほんまにまだまだ駆け出しなんで・・・でもあと2年はやりたい。
 80歳になったらまた人生を考えますわ」

 

 

 

 

 

 

 
もうすぐ自宅というところで運転手さんに聞いてみた。

「ちなみに駆け出しって仰いましたが、何年前からタクシーに乗ってはるんでしょ
 うか?最近は会社を辞めて運転手さんになる人多いらしいですけど・・・」
「ええ、今年でちょうど30年になります」

酔いが醒めた。運転手さんという職業にもいろいろあるんやろうなとは思うけど、
まだお客さんに道を聞かないとあかん自分を駆け出しやと言うその運転手さん
のスピリットに心がぐんと動いた。

「30年・・・ですか?ベテランですやん」
「年数ばかりベテランですが、仕事ぶりは駆け出しです。まだまだです」

かなりスムーズなドライビングテクニックで、ものすごく乗り心地が良いことに気
がついたのはその時だった。

お話をされている声も落ち着いていて、笑い方にも嫌味がないのは、タクシーの
ドライバーも接客業だということにこだわっておられるからなのかもしれぬ。

だいぶ前に日大高校に行ったときに中国語を極めた運転手さんと話が弾んだが
その時と同じく、非常にインスパイアされ、最後にお礼を言って降りた。

まだまだこれからですわ。運転手さん、僕も頑張ります。早く胸を堂々と張って、
自分はプロなのだと言える日を目指して。

 


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