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執筆と知識

2025.05.18(日) 03:00

5月18日。CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス・ナイン)についての文章を英語で書き始めたが、第二段落で脳がバグった。こりゃあかんわ。もっと理解しないと書けない。そういえば思い出した。高橋源一郎さんがお書きになった小説の書き方の本を読んだことがある。物書きが書けるのは熟知していることだけでっせとあった。

その点で言えば、なんでもかんでも知っておこうとしなければ題材が枯渇する。それは小説に限った話ではない。私のように英語の文章を書く物書きも同じである。現にGRISPR-Cas9についての知識があいまいなので、文章の途中で書けなくなった。そんなものである。

小説なんだからなんでもいいというのは、ある意味では正しい。小学校の理科の先生が復讐のために爆弾を炸裂させて教え子を殺すことは100%あり得ないのだけれど、もっと言うなら小学校の授業に我が子を連れてくることでさえもあってはならないのだけれど、小説なのだからそう目くじらを立てなさんなというのもわからんではない。

しかし、それでもできる限り現実に近づけるために、徹底して取材するのが作家というものである。

言うまでもないが、インターネットでの「取材」は取材ではない。AIがいくら優秀になったからと言っても、知らないことを文章にすると必ずどこかに瑕疵が見つかる。文章が不自然になり、つじつまが合わなくなる。そもそも、自らリテラシーを放棄しているようでは作家とは呼べない。

文章の書き方にはいくつかの流儀があるし、小説の設定だっていくつかの型がある。それを外すとトンデモない文章になることが多い。基本的な書き方は知っておかねばならない。しかし、書き方を知っていても書けないもので、読者を引きつける何かがないと食っていけないのである。

とりあえずCRISPR-Cas9についてはうっちゃっておこう。いつか書けるようになればいい。今はあれこれ繙いたのが精神の疲弊につながって、遺伝子の三文字さえも見たくない気分である。

木村達哉

追記
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