5月20日。今年度から新しいことを勉強しようと思い立ち、と言ってもずいぶん前から考えていたことなのだけれど、ようやくそのタイミングかなと思って「大学」に通うことにした。若い頃に在籍していた大学には音楽をするために行っていたようなもので、音楽をしていないときは麻雀ばかりしていた。
英語学も英文学も、授業は実につまらなく、教授たちからもやる気が感じられなかった。ガクセイタチモドウセロクニベンキョウセンダロという先生方の思いはまさにそのとおりで、我々の多くは勉強しなくても単位をくれる、「楽勝」と呼ばれる教授の授業ばかり履修していたように思う。大学での学びは、私の場合、読書と楽器と人付き合いだった。
歳を重ね、人生の残り時間もさほど長いわけではない。しかし、とは言え、短いわけでもないように思われる。やり残したなという思いはつのる。生きているうちにしかできないのだ。やらずにあきらめるのは惜しい。そんなわけで、また勉強することにした。
還暦を過ぎてせっかく学ぶのである。空いていれば最前列に座ることに決めた。わからないことがあれば積極的に質問することも自分との約束に加えた。シャイでいいことなど何ひとつない。関西人は「もとをとる」という意識が強いが、決してその手のものではない。純粋に学びたいのである。
今日は小説家の増山実先生が講師であった。いろんな思いを乗り越えて、小説家としてようやっと55歳でデビューされた方である。営業マンをやっていたこと、思わぬ縁で放送作家になったこと、小説家になりたかったこと、賞に落ちた後にプロ作家からの強い励ましの言葉に救われたことなど、なんだか私と似ているなと思いながらお話をうかがっていた。
終了後は先生のご本を買って(画像)うち一冊にサインをしていただいた。さすがに五冊全てにしていただくのは申し訳ない。その代わり、毎回一冊ずつサインをしてくださいとお願いしたらご快諾くださった。彼の講義までに最低一冊を読んでおかねば失礼にあたる。まずは2016年度の大阪ほんま本大賞を受賞された『勇者たちへの伝言』を開いて読み始めた。
私も93冊の著作を持つ作家である。しかし、子どもの頃に憧れていた小説家ではない。英語で小説を書いた経験はあるが、私淑している遠藤先生や浅田先生、向田先生などからはかなり遠い場所で本を書いている。一歩でもそうした先生方に近づけるよう、今はただ書き続けよう。
木村達哉
追記
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