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福島にて、二日目

2025.09.11(木) 10:00

9月11日。福島二日目である。昨夜ひどく雨が降っていたが、特に問題なし。今朝の雲は鈍色ではあったけれど、予定通り、浜通りに向けて出発した。最初に前川君が連れていってくれたのは、津波が襲ったのに生徒たちも先生方も全員が助かった請戸小学校である。

請戸小学校の奇跡と呼ばれるが、車いすの生徒も含めた全員が近くにある大平山に避難して無事だった。詳細はこちらの絵本をぜひご覧いただきたい。請戸地区の人びとの多くが犠牲となったのは無念である。が、子どもたちの命を救った当時の先生方の判断には拍手を送りたい。下の画像は遺構となっている小学校である。

次に向かったのは東日本大震災・原子力災害伝承館(HPはこちら)。どうしてこんなにも被害が大きくなってしまったのか、人々の暮らしや想いはどうだったのかを手に取るように理解し、また感じ取ることができる場所である。伝承館に来るたびに、最後の生徒たちの修学旅行をどうして福島にしなかったんだろうと悔やまれる。

語り部の泉田先生のお話を聞いているうちに、心が切なくなってしまって、涙が溢れ出た。隣では妻もハンカチを出していた。実際に被害に遭われた方のお話は胸に迫る。自分が当事者だったらどうしていただろう。津波が本当に襲ってくるとは思わず、のんびりしていたかもしれない。

伝承館のあとは、おれたちの伝承館。フォトグラファーの中筋さんが、休館日だったのに開けてくださったと聞いて恐縮した。伝承館は災害の資料がこれでもかと詰まっている場所だが、おれたちの伝承館は人々の「声」が溢れる場所である。人々が詠んだ歌、描いた絵、創った創作物が展示されている。

この日、最後の訪問は双葉屋旅館。女将さんの小林さんに貴重なお時間を割いていただいた。福島第一原発がメルトダウンを起こした2011年の2年後にはウクライナのチェルノブイリ原発を訪れ、それ以来何度も、なんと戦争中の今年も、訪れておられるとのことで驚いた。

おれたちの伝承館の中筋さんといい、双葉屋旅館の小林さんといい、もっともっとお話をうかがっていたいと思う方々だった。これは一週間ぐらい福島に滞在するしかないわと、前川君と話した。

小説の尻尾をつかまえるために訪れた福島県だったが、それをつかまえるどころか、自分の人生を考える機会となった。多くの方々が「あのとき」以来闘ってこられたことがわかる一方で、今の大学生はすでにほとんど大震災のことを知らないという側面もある。

復興とは言うけれど、何をもって復興と呼ぶのだろう。危険と言われた場所で自転車レースが行われている。JRの電車も高速道路もすべて開通した。では、人々の気持ちはどうなのだろう。故郷を追われた人たちはどうなっているのだろう。そんなことを知るために、皆さんもぜひ福島を訪れていただきたく思う。

俺にはなにができるのやろ。ホテルに帰ってからずっと独り言ちている。

木村達哉

追記
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