BLOG / ブログ /

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 福島県と沖縄県のお話

福島県と沖縄県のお話

2023.01.02(月) 12:00

利害なく動いているととんでもなく気の毒に思っていただけるのか、思いもよらないお仕事のオファーをいただけることがある。昨年は芸能事務所オリジン・コーポレーション代表の首里のすけさんからラジオ番組を持たないかと那覇の焼鳥屋で持ち掛けられたり、琉球新報の関戸さんからせやろがいおじさんとの対談をしないかと誘われたり。

身に余るお話を断るわけもなく、前者は「キムタツ✕ひーぷーのオキナワ・ジモトーク」のパーソナリティーという形に落ち着き、後者はこういう形で琉球新報の元日号に掲載された。特にそれほどメディアに取り上げられることのない立場としては、周囲が作りだしてくださる流れにぷかぷかと浮いておこうと思う。

「利害なく」という言葉が一番似合うのは、福島大学の前川君だと思っている。灘校教員時代から東日本大震災の被災者に思いをはせ、ついには退職して福島県に移住をした前川君である。灘校ではデスクを並べ、一緒に仕事を…と書きたいが、おおよそ空き時間の大半を議論という名の雑談に充てていた元同僚である。

福島県をなんとかしたいと思ったのか、それとも復興の真っただ中で歴史の転換点を体験したいと思ったのか、あるいはその両方なのかはわからない。しかし、安定した職を辞して、無職(正確にはNPOふくしま学びのネットワーク事務局長という肩書きはあるが、NPOに給与が発生するわけがない)になった彼の生き方に、芥川龍之介の『或る阿呆の一生』を思い出した人も少なくないのではあるまいか。

大晦日から正月にかけて、彼の本を読んでいる。性的マイノリティという言葉でわれわれ素人が思い出すのはLGBTやLGBTQであるが、言葉こそ知っていてもそういった人々の実際を理解している人は自分を含めてどれぐらいいるのだろうか。

加えて、性的マイノリティ団体についての研究対象は東京などの大都市部のものが中心であり、地方の団体についての学術調査はほとんど行われていない。その点でこの本は地方と性的マイノリティの関わりを調査し、発表した初めての書籍である。

「利害なく」という言葉は美しい。しかし、手弁当で活動することは極めて難しい。東日本大震災直後に立ち上がったNPOは100をくだらないが、そのうち現存している団体は片手で数えるほどしかないという。続かないのである。

かく言う自分も前川君が立ち上げたNPOふくしま学びのネットワークの一員であり、また、沖縄県でもNPOおきなわ学びのネットワークの理事として教育支援を利害なく行っている。福島と沖縄に向かう際にはいつも「利害を考えるなよ」と言い聞かせているが、そうでもしないとついつい物欲しそうな表情を浮かべてしまうのは人間性の下劣さゆえであろう。

今年も福島県と沖縄県で利害なく、前川君に倣って、活動をさせていただこうと思う。ひとりでも多くの方々が、会えてよかったと言ってくだされば、それがなによりの報酬なのである。

木村達哉拝

追記、
キムタツチャンネルを更新しました。新春のご挨拶と今年を幸せに生きるためのテーマについて語りました。キムタツチャンネルで得た収益は福島県と沖縄県に寄付しています。動画はこちらです。