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人を育て、故郷を守る

2021.04.10(土) 10:40

先日、琉球新報社さんを訪ねました。編集局の皆さんが、お忙しいなか、私のためにお時間を割いてくださいました。感謝しています。沖縄の現状をどこまで私が理解しているのかと問われると、なんとも言えません。しかし、こうしてブログを更新している現在も、オスプレイが頭上を飛んでいます。北谷のレストランに向かおうとすると、数多くの戦闘機が爆音を立てて私を迎えます。

終戦から何年が経っているのでしょう。沖縄が本土になってから何年が経っているのでしょう。現状をなんとかしようと、メディアも知事も議会も一般市民も、努力しておられると思うのです。そしてそれは選挙結果に反映されています。民主主義国家としては、至極当然の流れです。が、戦闘機は今日も飛び交っています。

2015年におきなわ学びのネットワークというNPOを立ち上げ、多くの高校を訪問するボランティア活動を続けてきました。勉強しませんかと言いながら、です。興南高校をお借りして、「夢をかなえる勉強会」を開催してきました。そこでも同様に、勉強しようと言い続けてきました。いい高校や大学に入ることそのものにはあまり意味がありません。塾や予備校ならば、生き残りをかけてそういう指導をすることは必須だと思います。が、教育の目的や意義はそういった偏差値至上主義であってはなりません。

人を育て、故郷を守っていくことです。

汚染水、海洋放出

そんな折、福島第一原発の汚染水を海に放出する旨を各紙が報じました。福島県の地方紙である福島民報が、トリチウム水の海洋放出について「政府が風評作る恐れ」「県漁連との約束 反古にするな」と強い見出しを打ちました。「官製風評」とも書かれています。

確かになにかしらの運動をして、領土を返還してくれ!故郷を返してくれ!原発をなんとかしてくれ!と叫び続けることは大切だと思うんです。しかし、安倍政権下でのさまざまなデモを思い出してください。まったく効果はありませんでした。そりゃそうです。多数派を自民党議員が占め、議席に守られているのです。彼らは、基地や原発に賛成している国民の代表なのです。反対派が少数派なのですから、民主主義の原則を考えると、いたしかたないことです。あきらめろと言っているのではないので誤解のないように。

沖縄出身者が首相になる日

さて、基地問題にしても汚染水問題にしても、沖縄と福島の勉強会で常に私が子どもたちに話していることがあります。なんだと思われますか。それは、安倍さんや菅さんが座っている椅子に、沖縄出身や福島出身の人が座ることです。そして霞が関で、沖縄出身者と福島出身者が活躍することです。

考えてみてください。首相の椅子にウチナーンチュが座ればどうなるでしょうね。そうなれば、基地問題を自分ごととして、しっかり取り組んでくれるんじゃないでしょうか。あるいは、霞が関の官僚たちの多くがウチナーンチュであれば、日本は大きく変わるはずです。

東大出身者が多い兵庫県、したがって官僚になっている人が多い兵庫県で1995年に巨大な地震が起こりました。壊滅状態で、数多くの犠牲者が出ました。しかし、2年後には美しい街へと復興しました。官僚にとっては自分の故郷が壊れたんですよ。彼らが一生懸命になってくれたことは、想像に難くありません。一方、沖縄出身の官僚は、私の教え子に聞くかぎり「ほとんど会ったことがない」んだそうです。

沖縄の子どもたちこそ、しっかりと学ばねばなりません。偏差値の高い学校に行って、いい会社に就職するために学ぶのもいいでしょう。しかし、故郷を守る人材に育ってくれればとは思いませんか。

そんなのは無理だ!とおっしゃいますか?

どうせ無理だとおっしゃるのでしょうか?

やりもしないで、無理だとおっしゃるのでしょうか?いままで自分たちにはできなかったから、子どもたちにもできないとおっしゃるのでしょうか?

人を長い目で育て、そして故郷を守ることをあきらめていては、いつまで経っても良くならないと私は思っています。故郷にいて故郷のために働くのもいいのですが、東京にいて故郷を支える人材がたくさん出てこないと、いつまで経っても故郷の問題は放置されたままになるのではないでしょうか。私が福島や沖縄でお手伝いさせていただいているのは、つまりそういうことなのです。

木村達哉拝