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多読!多読!と言うけれど

2024.03.23(土) 11:00

3月23日。ある方からご連絡(メール)を頂戴した。塾の経営者とのこと。お会いしたことはない。その方のメールには「毎日必ず暗唱をされているとメルマガ(KIMUTATSU JOURNAL)にありましたが、キムタツさんが暗唱されている文章をアップしてもらえませんか」と書かれていた。

語学の力を伸ばす土台は「たくさん読み、たくさん暗唱し、たくさん書く」活動である。そのどれが抜けても力を伸ばすことなどできない。仮に高校生の模試などが解けるという意味での英語力や日本語力が身についたとしても、話したり聞いたりする力はさほど高くならないはずだ。

我々は子どもの頃から膨大なる量の日本語を覚えてきた。途中で文法や音のミスを親や教師から訂正されながら日本語を話してきた。私の息子は「おもちゃ(玩具)」を「おもちや(お餅屋)」と発音していたが、面白いのでそのままにしておいたら誰かに訂正されたと見えて正しく発音できるようになっていた。小さい「ゃ」はこう読むのだというルールを誰かから教わったのだろう。

たくさんのインプットをし、たくさんのアウトプットをするのである。したがって多読が大事なのだが、多読多読と言っても、単に読んでいるだけでは全然ダメで、然るべき量を頭に徹底して叩き込まねばならないのである。でないと、読んだ文章をただ通過するだけに終わる。

昭和時代の英語教育と日本語教育は徹底した暗唱がベースになっていた。職員室に列を為し、覚えた英語や日本語を先生に話す生徒たちの姿が毎日見られた。ところが徐々に様相が変わり、たとえばGraded Readersなどを毎日読むのが多読だと若い先生方が思い始めた。

多読セミナーなるものに参加したことがある。講師の先生が多読の重要性を説いておられ、さもありなんと頷いていた。ところがその先生の学校での実践を聞くと、多読でもなんでもないことがわかった。これが多読?ぜんぜん多くないじゃないかと思った。しかも読み飛ばして終わり、である。定期試験にも入れないのであろうか。

そんなのはディズニーのビデオを見ているのと同程度の英語力しか期待できまい。

Google本社副社長兼Google Japan代表取締役社長だった村上憲郎氏の著書を忘れた頃にちょくちょく読み返すが、恐ろしいほどの量の英語に接しておられたことがわかる。のたうち回るとはまさにこのことだろう。聞き流しだの読み飛ばしだのという言葉がちゃんちゃらおかしい。

灘校時代、生徒たちには「文も文章も大量に覚えなければ達人にはなれない」という話をよくして、たくさん読み、たくさん覚えてもらうことになった。6年間はその修行が続くことになった。高2あたりからアウトプット(話す・書く)量を増やしたが、それでもしっかりと覚える日々だった。

ユメタン⓪のセンテンス
ユメタン①のセンテンス
ユメタン②のセンテンス
ユメジュクのセンテンス
ユメブン⓪のセンテンス
ユメブン①のセンテンス
ユメリスやまるまるリスのパッセージ(全文)
長文問題集のパッセージ(一部)

私は英語のプロなので、毎日の暗唱は欠かせない。ニュースなりアプリなりから適当な長さの文章を選び、Wordに貼り付けて暗唱している。日本語は読んだ本の中でこれはと思った部分をそのまま暗唱している。向田作品が最近は多いが、今日は林芙美子の『浮雲』であった。

語学の力を上げるというのはそういうことなのである。言うまでもなく今日のこのポストは、そこまで英語力を高めたいわけではなく、多読ごっこ、リスニングごっこ、スピーキングごっこをしたい方に書いたのではない。本当に日本語や英語の力を高めたいという向きは再度書くけれども、「たくさん読み、たくさん暗唱し、たくさん書く」ことをお勧めする。

木村達哉

追記
メールマガジン「KIMUTATSU JOURNAL」を無料配信しています。読みたいという方はこちらからご登録ください。英語勉強法について、成績向上のメソッドについて、いろいろと書いています。週2~3通配信です。家庭や学校、会社での会話や先生方は授業での余談にお使いください。