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ガリヴァー旅行記

出版社 岩波文庫
著者 ジョナサン・スウィフト

本書を児童小説だと誤解している人が多いのではないでしょうか。実際には大の人間嫌いであるスウィフトが、人間社会に対して警鐘を鳴らすために書いた風刺文学です。当局や大衆からの猛烈なる怒りを買うことが予想されたので、原書は仮名で執筆されました。実際には1726年の初版から現在に至るまで、世界中で読まれる人気小説となっています。が、スウィフトの思いとは裏腹に、児童小説や冒険小説だと勘違いされているのは残念なことかもしれません。

第1章はリリパット国。人々は6インチ以下の小人で、建物や動物もすべてそれに応じたサイズです。リリパット国の小さい社会とナンセンスな政治体制は18世紀のイギリスを風刺しています。第2章はブロブディンナグ国。人々の身長はおよそ18メートルです。ガリヴァーが王妃に性的なおもちゃ扱いをされる記述があったり、体臭のきつい王妃や女官たちの巨大な毛穴につまった老廃物の臭いに関する記述が非常に詳細であったりして、いかにスウィフトが人間(特に女性)に対して嫌悪感を抱いていたかがわかります。第3章では空に浮かぶラピュタ、そして日本が登場します。第4章のフウイヌム国では、人間に似たおぞましい生き物ヤフーが登場し、ガリヴァーに木の上から糞を投げつけます。ガリヴァーにセックスを強要するメスのヤフーも登場します。言うまでもなく、Yahoo!という名前は『ガリヴァー旅行記』を起源としているのです。

ラピュタやヤフーが『ガリヴァー旅行記』に由来することなんて知らなかったという人も多いのではないでしょうか。文章のここかしこに「うんこ」や「おしっこ」を表す言葉が登場します。読み終わる頃には児童文学や冒険小説だと思う人はいらっしゃらないと思います。私は大学生の頃に原書で読みましたが、絵本との違いに衝撃を受け、そのあとに岩波文庫版を読み、一気に引き込まれました。いまさら『ガリヴァー旅行記』かよ!なんて言わず、一度読んでみてください。