| 出版社 | 角川書店 |
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| 著者 | ダン・ブラウン |
舞台となるのは、歴史と象徴が幾層にも折り重なる中欧の古都プラハ。昨年10月に旅してきたばかりだったので、登場するカレル橋やプラハ城の聖ヴィート大聖堂、ヴァルタヴァ川など、読みながら見てきた物が鮮やかに蘇りました。
象徴学者ロバート・ラングドンは、不可解な失踪事件をきっかけに、古代の秘儀、最新の科学理論、そして現代社会に潜む権力構造が交錯する迷宮へと導かれていきます。次々と明らかになる暗号や象徴は読者の知的好奇心を刺激し、ページをめくる手が止まりません。
読み進めるほどに緊張感は高まり、結末に至るまで一切の緩みがない。それでいて、読後には単なる爽快感というよりも、余韻が深化していきます。本作でダン・ブラウンが提示するのは、「人はどこまで真理を知るべき存在なのか」という問いです。宗教と科学、信仰と理性の対立は単純な二項対立として描かれず、現代社会を生きる私たち自身の問題として静かに突きつけられます。そのため物語は、謎が解かれることで完結するのではなく、読み終えたあともなお、思考の中で静かに脈打ち続けます。
ダン・ブラウンの最新作が遂に刊行と知ってどれだけ喜んだことか。前作の『オリジン』から待つこと8年。この作品を完成させるための科学、医学、歴史学、宗教学、芸術等についての専門的な調査や取材をするには、当然必要な年月だったに違いありません。知的刺激に満ちた物語を求める読者に薦めたい作品です。