| 出版社 | 角川書店 |
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| 著者 | ダン・ブラウン |
舞台となるのは、歴史と象徴が幾層にも折り重なる中欧の古都プラハ。プラハを旅してきたばかりだったので、登場するカレル橋やプラハ城の聖ヴィート大聖堂、ヴァルタヴァ川など、読みながら見てきた物が鮮やかに蘇った。
象徴学者ロバート・ラングドンは、不可解な失踪事件をきっかけに、古代の秘儀、最新の科学理論、そして現代社会に潜む権力構造が交錯する迷宮へと導かれていく。次々と明らかになる暗号や象徴は読者の知的好奇心を刺激し、ページをめくる手が止まらなくなる。結末に至るまで一切の緩みがない。それでいて、読後には余韻が深化していく。
本作でダン・ブラウンが提示するのは、「人はどこまで真理を知るべき存在なのか」という問いであろう。宗教と科学、信仰と理性の対立は単純な二項対立として描かれず、現代社会を生きる私たち自身の問題として静かに突きつける。物語は、謎が解かれることで完結するのではなく、読後も思考の中で静かに脈打ち続ける。
前作の『オリジン』から待つこと8年。この作品を完成させるための科学、医学、歴史学、宗教学、芸術等についての専門的な調査や取材をするには、当然必要な年月だったに違いない。知的刺激に満ちた物語を求める知的な読者に薦めたい作品である。