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海と毒薬

出版社 新潮文庫
発売日 1960年7月15日
著者 遠藤周作

この作品は遠藤作品の中でも特に有名で、医者とはどうあるべきかという表層的な議論のみならず、日本人のステレオタイプや集団心理を論じる際の題材としても扱われてきました。人体実験という部分だけを取り上げて話をすると、いかにも面白そうなマテリアルとなっているのですが、実は遠藤周作先生の作品にはそういう「いかにも」的な部分だけではなく、ひとりでは生きていけない人間の悲しさ、もしかしたら日本人ゆえの、他に流されやすい悲しさのようなものが、彼独自の宗教的背景にも絡まりあっていて、「私って何者」的な部分にまで思考のメスを入れさせてくれます。

この本が世に出たときに、様々な反応がありました。人間とは倫理規範よりもむしろ集団行動に左右されるという点を描いた素晴らしい作品だと褒め称えた人もいれば、そもそも戦争犯罪を題材にするとはケシカランと批判した人もいました。僕はどちらでもありませんでした。さまざまな視点から本書を反芻してほしいなと願い、推薦させていただきます。

また、時間のあるときに長崎市外海にある遠藤周作文学館を訪ねてみてください。当地はキリシタンの里としても知られており、遠藤文学の原点と目される小説『沈黙』の舞台となった場所です。遠藤周作文学館では貴重な資料を展示するとともに、遠藤文学に関わる収蔵資料の調査研究や情報発信に努めておられます。また、角力灘を見下ろす絶好のロケーションを楽しんでいただけることと思います。