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翻訳百景

出版社 角川新書
著者 越前敏弥

英語の本を85冊ほど出版してきました。英語に対する日本語の訳を作るという作業をひたすら重ねてきました。加えて、授業で使用する英語のテキストですが、英語を翻訳したものを配付しないと生徒たちが復習できませんので、自分で作ります。日本語を紡ぐのに多大なる時間を費やしてきました。英文の著者を無視したような日本語でもいけないし、かといって日本語として不自然なものでは全く意味をなさないし、そのぎりぎりのところを縫いながら全訳を作っていくのです。

英語のプロでもここだけはどうしてもうまく訳せないという部分があります。英語をまったく違う言語に置き換えるのですから、一対一対応的に翻訳ができるわけがないにしても、あまりにも上手くいかないときはストレスレベルがマックスになります。

この本は『ダ・ヴィンチ・コード』を翻訳した著者によるものです。本書のなかで、訳を上手くするコツがあるとすれば「日本語が得意になる」というしかないと述べておられます。正しい訳文を作るために「英語の辞書より日本語の辞書のほうがよく使う」ことになると。

英語を得意にしたいという日本人は非常に多いように思われます。が、一方で、本を読む大人がどんどん減ってきました。意外だと思われるかもしれませんが、英語のプロほど、日本語の表現力を高く保つために、たくさんの本を読んで、日本語のレトリックに敏感になっています。小説や詩は非常にいい参考書です。母語である日本語を大事にする姿勢こそが英語の達人への第一歩なのです。