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妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした

出版社 風鳴舎
著者 小林孝延

今回ご紹介する本は、こばへんこと小林孝延さんが刊行された本です。こばへんさんは、誰もが知っているであろう『天然生活』や『ESSE』などの雑誌の編集長を歴任なさった方です。小林編集長だからこばへん。

タイトルにある「妻」である薫さんは、末期がんの闘病の末、残念ながら旅立たれてしまわれました。薫さんの病気が大変な時に保護犬をご家庭に迎えられ、ぎくしゃくしていた家族の中に笑顔が戻っていきます。あらためて動物の持つ力の素晴らしさに気づかされました。この本は、保護犬である「福ちゃん」と回復する家族の物語です。が、こばへんさんは「保護犬にしろ保護猫にしろ、ぼくらは彼らを救っているようでその実いつも救われている」と、巻末に書かれています。

まだ日本では数は少ないようですが、ファシリティドッグとして病院で活躍する犬もいます。ファシリティドッグが小児がんや重い病気の子供たちが前向きに治療ができるように励ましている様子をSNSで見ています。励ますと言っても、単にベッドで添い寝をするとか、手術室まで一緒に行くというものです。が、犬がそばにいるだけで頑張ろうっていう力をもらえるのですから、すごいですよね。

こばへんさんの奥様の薫さんも、余命半年という宣告は間違いだったのではないかと思わされるほど、福ちゃんと一緒に生きられたのです。こばへんさんが福ちゃんを迎えようと決断されたことは、間違いなかったのですね。

また、抗がん剤についても丁寧に書かれており、抗がん剤についてほとんど知識がなかった僕にとっては勉強にもなりました。

さすが編集者というだけあって、こばへんさんの言葉は落ち着きがあって、冷静で、カッコつけることなく正直です。書き進めながら楽しい思い出だけでなく、きっと哀しく思い出すこともお辛かったこともあったのではないかと拝察いたします。しかし、感情的になることなくずっと優しい口調で振り返っておられるのです。もし僕がまたエッセイを書くようなことがあれば、こばへんさんのような編集者と仕事がしたいなと思いました。

「犬というものの正体は、“犬という形をした愛”なんです」とは、糸井重里氏のことばです。我が家にもさくらという犬がいますが、その小さな体躯からは愛が溢れています。保護犬保護猫に関係なく、家族や自分の生き方について考えさせられる、超お勧めの一冊です。