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愛しの座敷わらし

出版社 朝日文庫
発売日 2011年5月6日
著者 荻原浩

民間伝承に登場するキャラクターのなかでも、座敷わらしは一風変わった妖怪だと言えるでしょう。座敷わらし、主に岩手県に伝わる子どもの姿をした妖怪です。家に住みつき、家人に悪戯を働きます。突然目の前のものが動き始めたり、鏡に着物姿の子どもが映ったり、誰もいない部屋から物音が聞こえてきたり。しかし、座敷わらしが気持ち悪いからといって、追い出してはいけません。見た者には幸運が訪れ、家に富をもたらす妖怪なのですから。

人間誰でも多かれ少なかれ、問題を抱えて生きています。人間関係が原因となる諸問題に頭を痛めていない人に出会ったことがありません。仲間だと思っていた人から裏切られたり、組織の中で自分だけが冷たく扱われたり、クラスや職場にうまく溶け込めなかったり。最近では家庭内でリラックスできない人が増えているのをご存じでしょうか。親と(あるいは自分の子どもと)人間関係をうまく築けない。外での闘いで疲れた自分を癒してくれるはずの家が戦場になっている人だって少なくはありません。

そんなリラックスできない家に、もしも座敷わらしがいたらどんなことになるでしょうね。さっきいきなり水道から水が出始めたよ!風呂から鼻歌が聞こえるんだけど!和室に泥だらけの足跡があるのよ!ほらほら、座敷わらしのおかげで家の中は大騒動です。でも、そうこうしているうちに、家族の問題なんてのはだんだんなくなってしまうんじゃないかなぁと思うんですね。この小説を読んで、いろんな問題を抱えた家が岩手県に引っ越ししたあとに起こる騒動をお楽しみください。