5月31日。昨夜は華蓮というお店で黒豚しゃぶしゃぶを堪能し、ラ・サール丸山先生やアルク植元君、英語教室を開いておられる初瀬先生といろんなことを話して楽しいひと時であった。生きているとこういう楽しい時間もある。こういう時間があるから人間はそれなりに幸せに生きていけるのである。小さい幸せに敏感であらねばならぬ。
鹿児島にくるといつも読書好きな妻と二人で立ち寄る場所がある。天文館の定宿から歩いて十分ほどのところにある近代文学館である。鹿児島にゆかりのある作家(小説家や歌人など)を扱った文学館で、展示がかなり充実している。ここに寄らずしてどこに行くのだというぐらい、鹿児島といえば文学館である。
鹿児島に縁のある作家というと、林芙美子、海音寺潮五郎、椋鳩十、梅崎春生、島尾敏雄、そしてなんといっても向田邦子先生である。文学館の二階に向田先生の特別展示があるのだけれど、まずは一階をじっくりと見てまわる。本当は二階を見たくてしょうがないのだけれど、はやる気持ちをおさえる。
撮影が禁止されているのでいたしかたなくメモを取る。こういうときはスマホのメモアプリが役に立つ。周囲からは展示の前でスマホを長時間いじっている変なオヤジだと思われるかもしれないが、他人からどう見られるかを気にしない得な性格ゆえ、かなりの時間をかけて展示内容をメモアプリに転記していく。スマホに向かって話すだけで文字化してくれる機能を数理哲人先生に教えてもらったが、静寂な文学館ではその便利さも無粋に思える。
ここに来るたびに思う。帰りのフライトをどうして予約してしまったのだろう、と。この内容すべてを一時間や二時間で読むことなど到底不可能で、だからまた近いうちに来なければならぬ。できれば三日か四日、鹿児島に滞在して毎日来たいぐらいである。じっくりとゆっくりと小説家や歌人たちと語り合いたい。
何時間でもいれるねと妻が言う。訪れる先々で文学館を探す癖がついたが、かごしま近代文学館のおかげである。青森でも北海道でも文学館は充実した時間を与えてくれたが、今のところ、私には鹿児島が一番である。近いうちにまた来るからねと出口でひとりごち、空港へと向かった。
木村達哉
追記
メールマガジン「KIMUTATSU JOURNAL」を火木土の週3通無料配信しています。読みたいという方はこちらからご登録ください。英語勉強法について、成績向上のメソッドについて、いろいろと書いています。家庭や学校、会社での会話や、学校や塾の先生方は授業での余談にお使いください。