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2021.07.07(水) 10:00

今日は学研塾ホールディングスの社員(要するに塾の講師)の皆さんに向けて、講演をさせていただきました。300人ほどの方がご参加くださったそうです。「そうです」というのは、オンラインなので実際の人数はわかりません。少なくともそれぐらいの方がサインインされました。学研の皆さん、ありがとうございました。

学校の教員も塾の講師も向いている方向は同じで、生徒たちの力を伸ばそうとしているのですね。ところがある時期から、この関係がVSになってしまったのは、それぞれのプライドがつまらない言説になってしまったからだと推察されます。

教員は「塾なんか行くな」と言い、塾の馬鹿な講師が「学校よりうちはレベルが高い授業をする」などと言う。教員の「塾なんか行くな」は、学校のこともできていないのに塾に行っても意味ないでしょという意味だと思うのです。が、行く生徒からすれば、たとえば学校で高2のことをやっているのだけれども自分がわからないのが中3レベルのことだとすれば、もう塾でやってもらうしかないわけですね。その点では、僕は生徒たちに復習してもらえる塾を選ばないと意味がないよと言っていました。

僕の教え子でK君という真面目を絵に描いたような子がいましてね。医学部を目指していました。大阪にある塾に通っていたのですが、そこの塾の講師が「俺の授業は灘校の授業よりレベルが高い。学校のことよりこの塾の予習復習をしっかりやれ」と言ったそうです。凄い自信です。僕なんてその域まで行けませんでした。大学生バイトのその講師は相当凄い授業をするのでしょう。

K君はその馬鹿な発言を真に受けました。そして、結論から言えば、学校には一切来なくなりました。不登校になったのです。学校としては来ないのだからどうしようもないのですが、親御さんが慌てました。なんとかしてくれと僕に泣きついたので、K君の家までわざわざ行って、彼に成績が上がる理屈を説明しました。塾に行って素晴らしい授業を受けたから成績が上がるわけではないのだということを、です。が、悲しいことに洗脳されたK君は戻ってきませんでした。

学校と塾はもっと共存すべきです。学校でできないことを塾でやってもらえれば、胸を張って「この塾はいいよ」と言えます。学校でなんでもかんでも抱えてしまうと、やれ補習だとかやれ夏休み講習だと、教員はますます多忙になります。塾が補習的に動いてくれるのであれば、教員はそこの時間を個人的な研修に充てることができるのです。僕はそうあるべきではないかなぁ、塾は学校の補完的な立場で、生徒たちの力を伸ばすといいのにな、と思っています。

学研の方々にも、質疑応答のときにそう申し上げました。ご理解くださったようで嬉しかったですし、実際そうでないと意味がないんじゃないかなぁと思います。やはり学校が中心になります。そして遅れてしまった子や、逆にもっともっと前に進みたい子の指導は、なかなか学校ではできませんので、そこを塾が補完するような形であるならば、塾に行くのもいいのではないでしょうか。

木村達哉拝