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妻が余命宣告されたとき…

2023.11.08(水) 09:00

僕が生まれ育った木村家は、時代がそうだったのだろうけれども、家族の中でも父が圧倒的に強かった。テレビのチャンネルも、クーラー(当時はエアコンのことをこう呼んだ。今も我々の世代はクーラーと呼ぶ人が多い)を付けるか消すかも、家族旅行の行先も、なにもかも父が決めた。

反対意見をぶつけようものなら、と言っても彼が多額の借金をこさえるまでは意見を言った記憶がただの一度もないのだけれども、ぶん殴られた。したがって、弟はよく殴られていた。当時はDVという単語がなかったし、どの家庭も似たり寄ったりであった。

時が流れて父と母が57歳のとき、まず母が入院した。原因はわからなかったが、背中が痛いと言う。入ったのは大阪市の城東区にある病院だったがかなりのやぶ医者で、廊下には薬品の段ボール箱が所せましと積み上げられていた。患者たちは斜めになって歩いていた。医者に母の病状を聞いても全く的を射ない答えしか返ってこなかった。

父が脳梗塞を患って右半身麻痺となり、別の病院に入院したのはその翌年のこと。父の担当医に母の病院について話すと、ではお母さんもこちらに呼びましょうと言ってくださった。つまり、両親が同じ病院に入院することになった。病院が違うとこうも違うのかと驚いたものである。

先生は手を尽くしてくださったのだけれども、それから3年ほどして、肺がんで彼女はこの世を去った。初期治療が適切であればと悔やまれた。死んだあと、母の手紙が見つかった。あんなにも威張っていた父のことが書かれていた。私は一緒にいれて幸せでしたと書かれていた。

父の涙を、号泣を、私は初めて見た。

久しぶりにお勧めの本を更新した。本書は、奥様に先立たれた著者が、奥様のがん治療でもっとも大変なときに保護犬を家族の一員として迎え入れ、結果としてぎくしゃくしていた家族の中に笑顔が戻っていったエピソードを書いたエッセイである。超お勧めの一冊。本書の詳細はこのHPのお勧めの本のページ(こちら)に記したので、コラムだけでも読んでいただきたい。

木村達哉

追記
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