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『雪国』

2023.12.29(金) 05:00

12月29日。川端康成先生の『雪国』を50年ぶりに読み返しているが、ここかしこの表現の理解に苦しんでいる。小学生の読書とは、当然と言えば当然なのだろうけれど、おおいに違って、ひとつひとつの表現に目を止めて、その風景なり登場人物の心象なりを考えてばかりいる。

たとえば。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
これは『雪国』の出だしであるが、「夜の底が白くなった」にはさまざまな解釈が可能である。トンネルを出たときに風景の下が白く見えたのか、あるいは乗った汽車がトンネルから出たときに感じたイメージだったのか、いろいろと考えねばならない。

実際、この部分の解釈は翻訳者によって異なるようで、翻訳家の山本史郎先生のご本によるとフランスとアメリカとドイツでは、翻訳の内容が異なるという。小学生だった私が深く考えたとは思えない。

その意味で、もうすぐ還暦を迎える私が、小学生のときに読んだ本を読み返すことには意義があるように思える。あの頃に繙いた芥川や遠藤を読み返してみようと考えている。当時は「読んだ」とは言え、文字を追っただけであって、深く考えたのではない。それでは「読んだ」ことにはならない。

今年は講演が多く、本をじっくりと読む時間が取れなかった。毎年そう言っているのは日記を開けばわかるが、それでは成長がない。来年は「私は物書きです」と名乗るからには、死後にも遺る本を書いていかねばならぬし、そのためには文章をもっと読まねばならぬ。

木村達哉

追記
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